海外大学院留学ってぶっちゃけどうなの? ~「なぜ駐在員は大変なのか」を踏まえて~

 ※画像はイメージです。政治的な問題には言及しません。悪しからず。


もし、例えばもし英語圏の国、地域で将来働く、もしくは国内の外資系企業に就職を見据えて海外留学を考えている方も多いと思います。実際、通常の日本の大学を卒業した学生がどのような経緯をたどるのかを、別サイトのブログ「なぜ駐在員は大変なのか」と比較しながら紹介していきます。

※駐在員と大学院生で境遇は違いますが、何かと読んでいて助かりました。


1、 標準的な日本人(ていうか自分)のイギリス大学院モデルケース

(スペック:日本の標準的な学部卒業、TOEIC約900点、日本国内においてバイリンガルスタッフを3年経験)


1か月目

ある程度準備してから留学に臨んだので、実はそれほどいわゆる海外適応期曲線初期の高揚感はなかった印象。留学する前に英語圏を含め18か国、地域をすでに旅行したので、そのうちの延長みたいな形ですんなりとはいれた。例えば訛りとかもきついのかな?って思ってたけれども自分のいたイギリスの地方都市はそれほどきつい訛りはなし。北のスコットランドやアイルランドならば確かにきついアクセントがあるようだが、こちらで日常会話レベルでの意志疎通に支障なし。イギリス人の寮の受付いわく、“君の英語は問題ないよ”とのこと。後々これは実は問題になるのだが、、、


授業も最初は海外の講義は卒業するのが難しいということで構えてはいたが、最初はオリエンテーションや新入生歓迎会など、これが大学院の生活?とむしろ拍子抜けするほど。

ただ、何だろうfresh off the boatっていうのか、現地人に比べて右も左もわからない感はあった。これって国内でも転勤先で現地の人らの常識?ってのか、そういうのをひとつづつ覚えていかなきゃなんない感じ。とくにネイティブ同士の会話ってのか、ノリってのかはやっぱりわからない。よく言う笑いのツボっていうのか。これはどうも同じ英語圏のアメリカ人やカナダ人も違いを感じるようだが、全然理解はできるらしい。


(余談だがかの有名なブリッツユーモアをマスターしたいとイギリス人チューターに申し出たが、「それは不可能だ」とド直球で返された。理由は、子供ころから周りから、「これは面白い、これは面白くない」と指導が入るため、もう体で覚えてしまったとのこと。そういわれると説得力ある、、、)

※UK版Office。アメリカ版のほうも有名だけれど、本場イギリスのシュールさに慣れるとアメリカンジョークが物足りなく感じることも。なんだろ、ironicっていうのか日本語でいうとこの”斜に構えてる”っていう表現が一番しっくりくる。


幸いだったのは先のブログの場合は駐在員の方は仕事として英語圏(アメリカ)に赴任しているので、この出だしの段階で非常に焦燥感に駆られている風に見受けられますが、自分の場合は大学院生という「お客様」的な立ち位置だったので現地への適応が中心。比較的下手な英語力でもなんとかなった感じ。ちなみに、クラスの構成は約250人の学生のうち、三分の一が中国人で、次の三分の一がインド人、残りが多国籍で、イギリス人自体は約30人程度。まさに地球儀の縮小図。これが本当のグローバル化というならば日本の大学は言語の問題もありますが、なかなか同じことをやってのけるのは難しい。Brexitは賛否両論ありますが、EUを出てもイギリスが強気に出れるのは、この旧大英帝国の遺産が留学ビジネスなどで威力を発揮している感は否めません。


2~3か月目

ケーススタディやグループワークでは、幸か不幸か比較的レベルの低いチームに入れたので、つたない英語ながらもイニシアティブとることができた。ただ問題は、日本人に加え中国人やロシア人は他の言語圏出身者より低い傾向にあるため、グローバルチームの場合それが足かせになる場合が見受けられる。(旧東側だから旧西側の言語を学ぶ必要がなかった?)

これとは別にいわゆるクラブ活動的なもの(言語交換サークルや運動部)に参加したが、ここで初めて自分の英語力の低さを思い知る。マンツーマンのコミュニケーションは大概相手がレベルを落としてくれるので問題ないが、ネイティブ同士のディスカッションには全くついていけない。それこそブログのサイトのようにただ聞き手に徹して何一つ言えないような状態。音楽やTV、サブカルネタならそんなにダメージはないしそこから覚えていけばいいだけだが、もしこれが実務ならば致命傷という焦燥感はあり。そして次のステップへ、、


4~5か月目

年が変わり次のセメスターに入ってから状況が一変。別チームに編入になってからいわゆる本当の意味での“プロフェッショナル”のチームでの共同作業。状況としてはそれこそエリート国際会計士集団の中に多少日本に於いて経済学と会計学をかじっただけの英語素人が飛び込んでしまった感。圧倒的な実務経験と能力の差は短時間で埋められるはずもなく、ブログの主の5~6か月と7~8か月が同時に来た印象で、1)英語の勉強をしていたか、2)会計学を中心とした勉強をしていたか、3)自分の能力の低さに凹んでいたか、のどれかしかなかった。


この時の絶望感はそれこそ自分のレベルが英語初心者にまで退化したのか?疑いたくなるような無力感と焦燥を生み、件のブリッツユーモアのイギリス人チューターにこの精神状態を打ち明けたら、それは“パラノイアだ” “幻覚か何かの一種だ”とフォローが入ったが、向こうもビジネスなのでそういう類でなんとか生徒をリタイアさせないよう配慮だろう。彼は「まさにリアルビジネスケースだな」と呟いたが、もしリアルならば下手をするとクビだよ。これが実務でなく大学院なのが救いなのか?

またこの時のチームリーダーも曲者で、年下の中東出身のカナダ人でいわゆるナイスガイを演じることに長けており、「自分がカナダに初めて着いたときはイエスとノーしか言えなかったよ」などといいうフォローにもなってないようなフォローでいい奴を演じきっていた。(実際その人はCPA国際会計資格保持のエリート)


2、 結局イギリス大学院での英語力の目安って?

大学院入学レベル基準はIELTSであれば6.5~7.0、Oxbridgeや医学部クラスであれば7.5を要求されることが多いですが、やはりこれは、本当に最低限、ぎりぎりのレベル。実際英語が公用語のインド出身者は、8.0は当たり前で、それに加えて、英米系の外資系企業での実務経験ありといったのはほんとにザラ。フラットメートのインド人はスピーキングで8.5あるけれども、それでも余裕でとれたというクラスの実力(ちなみにその人ダブルマスター)。正直全体的に日本人や中国人などの漢字圏出身者はどうしても英語力が低い傾向があるので、大学側もビジネスとしてIELTSを低めに設定しておかないと東洋人の入学者が減ってしまうという打算でしょうね。




※マレーシア人の受験生。スピーキングのスコアは満点の9.0。のインドやマレーシアのような英語公用国ではこんなのザラ。


ただ、その意味では最低限6.5で授業についていくのは本当にしんどい。ヨーロッパ系言語の基準でCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)というのがありますが、ほぼネイティブと同じC2で始めないと、授業についていくだけではなく、チームディスカッションでも全く歯が立たないという結果になってしまいます。C2はIELTSの8.0以上となるのでやはり英語力は満点近くをたたき出して初めてスタートラインに立てる感じ。


ちなみにIELTS7.0でTOEIC950点以上ですが、ご存知の通りTOEICではライティングとスピーキングの能力が問われないザル試験。この試験で採用を決める日本や韓国の大手企業ってどんなけ、、(TOEICは英語力の低い日本人や‘韓国人向けにTOEFLをアレンジして作られた試験なので、必然的にTOEFL、IELTSよりもレベルが下がるのはどうしても仕方ないのですが、、)


話脱線しますが、IELTSのスピーキングとライティングスコアの決め方なのですが、友人のインド人が言うには、受験者が複数回受ける場合はその人の前回のスコアを基準に内容が若干よかったか悪かったかで決めるという噂があるので、例えば2回受けて劇的にスコアが伸びるのは珍しいとのこと。だから受験者が必至で試験を受けまくっても大してスコアは上がらず、IELTSの運営サイドはがっぱがっぱぼろ儲けという実態、、(あくまで噂です)


3、 対処法

先ほど日本人や中国人の学生は英語力が低い傾向にあるとコメントしましたが、例外的に、例えばIELTSのスコアが低くても、大学院のビジネススクールに耐え、なおかつ優秀な成績を修める学生がいます。いわゆる英米系の外資系企業出身者か英語圏大学学部出身者です。彼らは例えば外資系企業出身者であればすでに競争原理の激務に耐えれるだけの素養があり、また英米流のビジネス慣習に精通しています。また、英語圏の学部出身者はすでに3年以上の滞在経験があり、同じく英語圏での学習スタイルに慣れているので、大学院の学習もついていけるわけです。(この場合IELTSの試験は免除される)よく指摘されるように仮に20歳30歳を超えた成人であっても、本人のやる気さえあれば3年以上滞在しているのであれば、英語での実務に問題ないのはこのためです。(なぜユーチューバーのバイリンガールが英語しゃべれるのか?という答えが10年以上アメリカいるからってのと一緒ですね。)


じゃあそういうバックグラウンドを持っていない一般ピーポーの日本人はどうしたらいいのか?っという話になりますが、自分の場合はかなり地道な作業になりますがdictationと言って例えばパワーポイントのレクチャースライドや教科書の重要部分の文章を丸ごとすべてノートに書き写すという方法です。これはネイティブでもよくしている方法で(聖書とかの書き写しで慣れてる?)ある意味漢字とかを一つ一つ反復練習で書いて覚えてきた日本人にはこのほうがいいかもしれませんね。またこれだと会計用語を辞書なりグーグル翻訳なりをしやすくなるメリットがあります。後対訳ですが、一般に英語の単語や内容は英語で理解し、考え覚えていく、というのがセオリーですが、例えば、そもそも会計の知識が日本語である場合(日商簿記2級以上)、その知識がもったいない。また、20年、30年日本で暮らして日本語でのその分野で知識があるのであれば、そこに焦点を絞ってその分野だけは絶対に同時通訳できるくらいの能力は後々の実務を考えると必須になります。(それこそ解雇にならないためのディフェンス力)実際、先のチームリーダーはその分野の知識・プレゼン、翻訳力に絶対的な自信を持っていたので、イギリス人の間から“アラブの怪物”と恐れられていました。


実際プレゼンテーション、資料作り、エクセル計算や簡潔ながらも長文のエッセイ、英文書を作成しようとすると、相当の単語量、語彙の使いまわしに慣れていないと、話にならない。大量の文書をリーディングの課題としてケーススタディまでに読み込む、またリスニングも相当聞きなれないとすべての会話を聞きっとて英語で瞬時に考え発言するというのはほぼ不可能です。そしてなんといっても英語ベースの情報に何不自由なくアクセスできるというのは、母国語の能力に加え情報の範囲が格段に広がるので、英語を外国語として勉強する者にとって最も欲しい能力であるといえます。(インターネットでは英語の文献が一番多い)


あと、専門知識・ビジネススキルのほかに個人的にはWikipediaくらいの内容は日本語で読むのと同じくらいのスピードと理解力は卒業までにはマスターしたいところですね。というのは、たまにイギリス人で日本の文化や歴史に興味がある、だから日本人と質問・議論したいといったときに、最低でもWikipediaに書いてあるクラスの英単語を知っていないと、日本語なら知っているのにといった類の口惜しい思いをする。(例えば日英同盟Anglo-Japanese Alliance やおくりびと Departuresなど)後悔先に立たず、といったところ。面白いのはいわゆるWeaboo(日本のゲームやアニメオタク)っぽい人らでも、やっぱりそういう類は下に見られるから嫌なのか、そういう素性を隠して教養があるような歴史や文化の知識で勝負しようとする点。まあこっちはどっちにしてもWikipediaで調べないと訳せないんだけどね。


余談になりますが、たまたま自分の大学に短期の交換留学できてた日本人の学部生数人に英語で声をかけた時、急に押し黙って、「なんで英語でしゃべるんだろう?」とつぶやかれたとき。むしろなんでイギリスにいて英語じゃないの?ってこっちが聞きたいよ。またその引率の大学教授の方に「調子はどう?」って聞かれたとき、「毎日吐きそうなくらいしんどいですよ」って答えたらちょっと顔青ざめてはりました。自分が言うのもなんですが、皆さん、頑張ってくださいね!



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